はじめに
この記事では製造業(現場目線を中心に書いています)→異業種への転職についてを書いています。
製造業から同じく製造業への転職を検討している人はこちらの記事をご覧ください。
未経験から製造業にチャレンジしたい人には志望動機の例文をまとめたこちらの記事が参考になると思います。
- 「製造業がきつい」
- 「このまま現場を続けていくのが不安」
- 「未経験の仕事に転職するのは難しいのでは」
製造業で働く人でこう思っている人は少なくありません。
結論から言うと、製造業から未経験職への転職は可能です。
ただし、
- 同業種転職より難易度は上がる
- 成功する人には共通点がある
- 失敗する人にも共通点がある
この記事では、
- なぜ製造業から未経験転職は難しく感じるのか
- 活かせるスキルの具体例
- 未経験でも目指しやすい職種
- 成功するための準備
これらを自身の体験も交えながら、整理します。
製造業が「きつい」と感じる人が増える理由
製造業がきついと言われる理由は色々ありますが
- 立ち仕事や肉体労働による体力負担
- 夜勤、交代勤務で労働時間が不安定
このような体力的な悩みが多いと思います。
また、
- 年収の伸びにくさ
- 将来のキャリアパスが見えづらい
などの将来性についての心配も増えているのではないでしょうか。
昔と違って今の現役世代は、年金の問題、物価高などの情勢も考えなければならず
定年まで働いて退職金と年金で老後を過ごせるような時代ではなくなっているのも要因の一つだと思います。
製造業からカメラマンになった部下の話
製造業から別の業界へ飛び出していった人を何人も見てきていますが
今でも印象に残ってる私の元部下の話をしたいと思います。
私が当時28歳 その部下は25歳で入社してきました。
初めての現場で、図面の見方も分からなければ、ノギスも使ったことないド素人でした。
- 機械を立ち上げるのに人の倍は時間かかる。
- 作った製品は品質不良(不良を発見できない)
- 「こうしたらいいと思う」と閃いたアイデアを実践して機械を壊す
思い出すだけでもとんでもない部下だったと今でも思います(笑)
仕事は上手くいかない、周りからの仕事の評価も低い。
いつしか彼は持ち前の明るさも失って、みるみる元気が無くなっていってしまいました。
仕事に明け暮れていたが、仕事ばかりで悩んでいるのも人生損だと思い、趣味でカメラを買ったと言いにきました。
休みの日はカメラで景色や街並みを撮影し、休み明けには「この写真上手くないですか?」と見せてくるようになりました。
そんな日々が続いたある日「俺、カメラを仕事にしたいんです」と言って5年努めた会社を辞め、カメラマンとして異業種へとチャレンジしました。
彼は今ではスタジオでの写真撮影から始まり、結婚式の動画制作、企業のプロモーションムービーも請けています。
私もどんな動画を作っているのか、退職してからしばらくして見せてもらいましたが、とても高いクオリティで驚いたのを今でも覚えてます。
彼は仕事が出来ない、能力がなかったわけではありません。
ただ製造業という環境が彼と合っていなかっただけでした。
どの仕事でも人によって向き不向きはどうしてもあります。
もし今の現場が、製造業がつらいと思っている人は、自分に合う環境選びも選択肢として持っておくのもいいと思います。
製造業から未経験転職は本当に難しいのか?
先ほど例を挙げましたが無理ではないが、戦略なしでは厳しいといえます。
私の元部下の事例は
- 休みの日にカメラを使ってスキルを磨いていた
- 道具もリサーチして自分の理想の写真はどのレンズが適しているのか調べていた
- 構図や写す角度など「きれいな写真」の共通点を研究していた
こういった積み重ねがあったからこそ、カメラという趣味を仕事に出来たのだと思います。
ただし、趣味でやっていないととか完全未経験が無理だということを言いたいわけではありません。
未経験の職種に転職するのに必要なことは
- 自分のスキルを棚卸すること
- 市場ではどんなスキルが求められるかをリサーチすること
- 自身の強みが未経験の業界でどのように役に立つかを言葉に出来ること
この3つを整理せずに転職活動をしても、難しいと言えます。
製造業で培われる「転用可能スキル」
① 再現性思考(標準化・仕組み化)
製造業において大切なのは「同じ品質のものを安定的に作る」という再現性です。
- 作業標準化
- 工程遵守
- ルーチンワーク
- 機械トラブルの対応
日々の業務で当たり前にやっていることですが
同じようにITの業界や物流業界といった仕事への親和性があります。
② 改善経験・問題解決力
モノづくりは常に品質や改善業務と隣り合わせです。
- 不良原因の特定、なぜなぜ分析
- 改善活動
- コスト削減
こういった改善経験はDX推進や業務効率化の仕事で評価されやすいスキルと言えます。
③ 数字意識
工程を順守し、計画通りに生産することや
不良率、原価意識など普段から数字を見る機会は多いと言えます。
- 生産数管理
- 歩留まり
- 原価意識
数字に強い人は生産管理や購買、営業職でそのスキルを活かせるでしょう。
私の工場での実績
私は工場責任者として赤字だった工場を3か月で黒字に改善させた経験があります。
当時私が工場に入ったときには工場にまともな管理者がおらず、誰一人として工場の実態を把握していない悲惨な状態でした。
最初の1週間は実態把握と整理に注力し
- 固定費の調査(家賃・電気代・水道代・人件費)
- 過去6か月の流動費の調査(原料費・資材・部品)
- 過去6か月の売り上げの調査
- おおよその損益分岐点を設定
これらを紙の帳票を見ながらExcelで計算して・・・今でもあのころには戻りたくないです・・・。
そうして見えてきたのは
- 原料をどんぶり勘定で発注(不良などで原料が無くなるのが怖いから)
- 生産工程も手書きで、職人が感覚で組んでいる状態
- 部品も大量ロットで購入(単価が安くなるから) 使うのは買った量の1割ほど
- 納期遅れで売り上げが立っていない状態
よく潰れなかったなって思うくらいの状態でした。
赤字の工場のため本社からもシステム導入の予算など出るわけもなく、泣く泣くExcelの管理シートを作りました。
私が改善するために行ったことは
- 生産工程をExcelで入力
- 工程を入れたら「在庫原料ー必要原料」でいくつ不足するのか明確に
- 原料発注量は歩留まりを考慮して最大10%上乗せまで。
- 必要部品も工程から自動計算させ、在庫を増やさないルールに
- 生産工程の効率化、頻繁な原料替えを無くし原料ロスを最小限にする
などを取り組んだ結果3か月で黒字へ転換、半年後には売り上げを元の倍まで回復させ
赤字だった工場も利益率25%まで回復させました。
恐らく製造現場で働いている人で、これに近い経験をしてきた人もいると思いますが
- 問題を見える化すること
- 達成目標(ここでいうと損益分岐点)を明確にすること
- 課題解決へ向けた手段を明確にすること
こういった改善事例は製造業はもちろん、他の業界、職種でも共通する考え方です。
製造業から未経験でも目指せる仕事
製造業の経験や考え方が活かせる職種、業界をいくつか抜粋します。
営業職
営業というと、ノルマやコミュニケーション能力ばかりが強調されがちです。
ですが、製造業出身者に向いているのは、いわゆる“ガツガツ系営業”ではありません。
おすすめなのは、
- 技術営業
- 法人営業(BtoB)
- メーカー営業
- 産業機器やITツールの提案営業
個人向け(保険や住宅、自動車ディーラー)はガツガツ系営業なので、スキルを活かすという面ではオススメしません。
法人向けの技術営業については私自身、現場から営業へ未経験から挑戦したのですが、
現場上がりの営業はめちゃくちゃ強いです。
- 顧客が設計した図面を見て「出来る出来ない」がその場で判断ができ
- 出来ない理由を技術的な視点で伝えることができ
- 出来るようにするための形状変更をその場で提案出来る
現場を知らない営業は「戻って技術に確認します」と宿題にしてしまいますが、この時点で顧客の熱は冷めます。
また、良く分かっていないのに「できます、何とかします」と勢いで言う営業マンも世の中たくさんいますが
後で取り返しがつかないトラブルになっているケースもたくさん見ています。
技術的な話になると「宿題」にするか「技術者を連れてくる」営業が多いため
技術も品質も分かっている営業はそれだけで際立つ存在になれます。
製造業の経験は、“営業未経験”という弱みよりも、
「現場を知っている」という強みのほうが大きくなる世界があります。
IT業界
IT業界は特に人材不足と言われており、2030年には79万人のIT人材が不足するという見通しです。
参考:経済産業省発行 IT人材育成の状況などについて
そのため、未経験からでも挑戦できる職種が増えています。
とくにプログラマーや社内SE、ITサポートなどは、ポテンシャル採用も少なくありません。
ただし、製造業出身者が狙うべきなのは「単なるIT人材」ではありません。
狙うべきは、製造現場がわかるIT人材です。
たとえば、
- 生産管理システムの導入
- 現場のDX推進
- 工場の自動化プロジェクト
- IoTやデータ活用の支援
こうした分野では、現場を知らないエンジニアよりも、
「実際の工程・品質・安全を理解している人材」が圧倒的に重宝されます。
特に製造業のDXに関わる分野では、
SAP や Oracle などのERP導入案件、
MES(製造実行システム)やIoT基盤構築など、現場理解が必要なプロジェクトが多数あります。
製造業の経験は、IT業界では『遠回りのキャリア』ではなく、『専門性のあるバックグラウンド』になります。
いきなり転職するのは不安…という方は、今の現場でDX担当として実績を作るのが最短ルートです。
未経験からDX人材になるための学習順序をこちらにまとめました。


生産管理
生産管理は、製造業の「司令塔」のような役割です。
主な業務は
- 生産計画の立案
- 納期管理
- 在庫管理
- 工程調整
- トラブル時のリカバリー対応
現場経験がある人は、
「この工程はこの順番じゃないと効率が悪い」
「この作業は段取りに時間がかかるから、忙しい朝の時間帯は避けた方がいい」
といった“勘どころ”を理解しています。
机上の空論ではなく、現場目線で計画を立てられるのは大きな強みです。
物流・倉庫管理
物流は「モノの流れ」を最適化する仕事です。
- 入出庫管理
- 在庫管理
- 配送手配
- 作業効率改善(導線のムダを無くす)
製造業で
- 在庫の山を見て違和感を覚えたことがある
- ムダな運搬に疑問を持ったことがある
こういった経験がある人は、物流業界や倉庫管理に向いていると言えます。
特にEC拡大や2024年問題(働き方改革による人員不足)、ドライバーの高齢化などもあり
物流業界は人手不足の状況が続いています。
製造業から転職したい人にとって、比較的入りやすい業界のひとつです。
購買(調達)
購買は会社の利益を最大化する仕事と言えます。
- 適切な原材料の選定
- 価格交渉
- 適正在庫、発注管理
- サプライヤーとの関係構築
製造現場で
- 製造原価の知識(原料費、加工費、人件費など)を身に着けた人
- 歩留まり改善をしていた人
こういった経験は強い武器になります。
また現場を知っているからこそ、サプライヤーの提案価格が適正かどうかを見極めることも出来ます。
「この数量、この単価は本当に適正か?」
と疑問を持てる人は、購買向きと言えます。
製造業から未経験業界への転職で失敗する人の特徴
製造業から転職したいと考えたとき、うまくいかない人には共通点があります。
- 勢いで退職する
- 年収を絶対に下げたくない
- 今の不満だけで職種を選ぶ
- 企業研究をしない
未経験業界への転職は“逃げ”で動くと失敗します。
特に多いのは、
「とにかく現場から離れたい」
という理由だけで転職してしまうケース。
- 営業はノルマがきつい。
- ITは技術の進歩が速く継続的な勉強が必要。
- 事務は単調作業の繰り返し
どの仕事にも大変さはありますので、調べもせずに転職するのはリスクが高いと言えます。
実際に失敗したケース
私の同僚で「楽そう」という理由で生産管理の仕事に転職した人がいます。
現場からすると涼しい部屋でパソコン仕事して、楽に映るかもしれません。
しかし実際は、
- 数字の入力ミスが許されないプレッシャー
- 一日中PCとにらめっこすることで目の疲労や座りっぱなしでの
- トラブル時のリカバリー対応
で苦労し1年で退職しました。
現場がきついからといって、
“楽そう”という理由で選ぶとミスマッチは起こります。
未経験転職を成功させる3つのポイント
製造業から未経験職種へ転職する場合、
勢いよりも「戦略」が重要です。
やみくもに応募しても通りません。
でも、準備をすれば十分勝てます。
① 自分の経験を“作業”ではなく“価値”で言語化する
多くの人がここで失敗します。
- 「ライン作業をしていました」
- 「品質管理をしていました」
- 「設備保全をしていました」
これでは評価されません。
企業が知りたいのは、『あなたが“何を改善し、何を生み出したか』です。
例えば
- 作業手順を見直すことで不良率を○%改善した
- 必要な備品の定位置を見直したことで段取り時間を○分短縮した
- 人員配置を見直し、月間生産数を○%向上させた
製造業では、日常的に「数字」と向き合っています。
日々の業務を作業として伝えるのではなく、どんな成果を生み出してきたかの視点が重要と言えます。
② 転用できる市場を“感覚”ではなく“求人ベース”で探す
「IT業界は成長しているしなんとなく良さそう」
「営業って年収上がりそう」
こういうイメージで転職を進めるのは、あとで「こんなはずじゃなかった」に繋がります。
転職サイトで求人を見たり、転職エージェントに相談しながら
- どんなスキルが求められているか
- どんな経験が歓迎されているか
- どんな業界出身者が多いか
を確認します。
ここで初めて、自分の経験が武器になる職種が見えてきます。
例えば、
- 「工程改善経験歓迎」→ ITの業務改善ポジション
- 「製造業経験者優遇」→ 技術営業
- 「品質管理経験者歓迎」→ 品質コンサル、監査職
製造業×◯◯という掛け算ができる職種をリサーチすることが重要です。
③ 在職中に“安全圏”で動く
転職で一番やってはいけないのは、感情で辞めること。
「きつい」「もう無理」
この状態で次も考えずに退職すると、生活するためにすぐに転職しなければならなくなり
選択肢が一気に狭まります。
まずやるべきは、
- 転職サイトに登録して求人を見る
- 転職エージェントに相談する
- 年収相場を調べてみる
登録したら最初はエージェントからの電話もありますが、転職を迫られることはありません。
大事なのは、「今の自分が外でどう評価されるか」を知ることです。
- 今の会社で頑張るのか
- 部署異動を狙うのか
- 本気で転職するのか
どう選択するかは、知った上で選べばいいと思います。
別の業界へ正社員として検討したい方は、ミドル~ハイクラス求人が多いエージェントで
まずはどういう仕事があるか、どれだけの収入を狙えるのかリサーチしてみてはいかがでしょうか。

よくある質問
Q.30代でも未経験転職は可能?
30代だからといって転職が出来なくなるわけではありません。
ただし20代と明確に違うのはポテンシャル採用ではなくなるということです。
- 自身のスキルがどのように活かせるのか
- それがなぜ会社に貢献できるのか
- 製造業を辞めて別の業界に行く志望理由
これらの「説明責任が増える」と思っていただければと思います。
歳を重ねると転職が難しくなると言いますが、年齢=転職難易度というわけではありません。
Q.製造業からIT業界は難しい?
結論から言うと決して簡単ではありません。
IT業界も人手不足とはいえ、誰でもいいというわけではありません。
- 社内SE
- ITサポート
- ERP導入補助
などの職種は比較的難易度は低めと言えます。
また、本気でIT業界への転職を目指すのであれば
- ITパスポートなどの資格を取得する
- 短期集中講座を受講する
などの手段も有効です。
ITパスポート自体が業務で特別役に立つというのとは少し違いますが、持っているということは一定のITスキルを身に着けている証明にもなりますし
業務時間外に自主的に勉強をしたという主体性をPRすることもできます。
短期集中講座は、お金はかかりますが独学で学ぶより効率的です。
また、受講後の就職支援まで行っているプログラミングスクールもあるので、そういった制度を活用する方法もあります。
ITスキルの習得は国からの支援制度を活用できるケースもあります。
条件に当てはまれば、自己負担を大きく抑えてスキルを身に着けることもできます。

本気でIT業界を目指す場合、エージェント選びはかなり重要です。
製造業出身者の転職支援に強いサービスについては、こちらの記事で詳しくまとめています。

Q.年収は下がる?
未経験の業界となると、基本的に短期的には下がる可能性が高いです。
ただし目先の年収だけにとらわれずに、どのようなキャリアを形成していきたいのかも含めて検討しましょう。
製造業からデザインスクールに通って、WEBデザイナーとして独立した人もいます。
将来何を仕事としてやっていきたいか、そのスキルを身に着ける環境はどこか、という視点で選ぶと間違いが起きにくいと思います。
まとめ
異業種への転職自体が難しいのではありません。
何も整理しないまま動くことが転職を難しくしているのです。
転職は今後の人生を左右する一大イベントなので、どうしても不安はゼロにはなりません。
ですが、構造を理解し、準備をすれば 「難しい」と感じている壁も乗り越えられます。
「自分は他の会社でも通用するのか」
と不安を感じているなら、
まずは自分のキャリアを一度整理してみてください。

そして、具体的にどんな選択肢があるのかを知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。





コメント