紙の日報のまま、情報の見える化と自動化する方法について。
製造業にかれこれ20年近く身を置いてきて、自社だけでなく協力外注や顧客の工場も見てきましたが
どの工場でも共通して運用しているのが、製造日報というものだと思います。
業界も違えば形式も違って当たり前ですが、日報無しにモノづくりをしている企業はほとんど無いのではないでしょうか。
あなたの工場では、この日報をどのように活用していますか?
- 生産出来高を確認し在庫管理に活用
- 不良数を調べ、不良原因の再発防止に活用
- 製造履歴として残し、トラブル時のトレーサビリティとして活用
など活用方法は多岐にわたります。
ただ日報を有効活用できていない企業も、実際多いのではないでしょうか?
この記事では現在開発中の紙の日報を変えずに、「転記ゼロ」と「週間レポート自動化」を実現する仕組みについて取り上げます。
1.なぜ製造日報はデータとして活用されないのか。
まず最初に誤解の無いようにお伝えすると、日報を上手く活用している企業も多いということです。
ウチはちゃんと毎日日報から情報を吸い上げているよ!という方もいらっしゃると思いますので、そういった方には多分お役に立てない記事なので読み飛ばしてください。
体感としての話にはなりますが、大手企業になるほどシステム化は進んで、データとして蓄積されており、中小企業は書いて保管しておくだけの運用で、日報の情報をデータ活用出来ていない企業が多いように感じます。
製造日報が紙で運用している
最近ではDXという言葉が出てきて、製造業でもデジタル化を進めようという動きは増え始めています。
カミナシといった、日報をタブレットで入力するツールなども採用が増えてきていますが、まだ紙運用している工場も多いでしょう。
- 工場が粉塵などがありタブレットが故障するリスクがある
- 油汚れや、軍手を付けておりタブレット操作がしにくい
- タブレット入力や操作が不慣れで紙の方がいい人が多い
- 紙で記録を保管しておきたい
このような理由から、手書きの紙運用を続けている工場も多いです。
製造日報を集計、解析する時間が取れない
紙で書いたとしてもそのままではメモにしかなりません。
紙の日報から必要な情報をExcelやシステムに転記することで、在庫と連動させて管理をしたり
工程を組んだりといった運用になってくるかと思います。
ただ、毎日発生する日報を転記するのは時間もかかるし、打ち間違いのリスクもあります。
自分の業務(在庫管理、工程など)に必要な情報を抜き出したら、あとはファイル保管されるというのも珍しくありません。
仮に日報に書いてある情報から全部手入力でExcelやシステムに打ち直すといった場合には
事務員さん一人が毎日その作業に追われてしまうのではないでしょうか。
2.紙の製造日報のデメリット
もちろん紙にもメリットはあります。紙のメリットは「なぜ紙の帳票は無くならないのか」でも詳しく書きましたが、誰でも直観的に書ける優秀なインターフェースだというのは、デジタルでは太刀打ちできないメリットです。
ただし、紙にも明確な弱点はあります。
過去の情報の検索が出来ない
紙の最大の弱点はこの、検索機能を持たないということです。
今までの履歴を調べようと思ったら本棚からファイルを引っ張りだして一枚ずつめくる必要があります。
- 特定の品番の製造履歴を調べたい。
- 〇号機の製造履歴を調べたい。
- Aさんの作業した履歴を調べたい。
このように条件を絞って調べたいという場合でも、探して整理するだけで時間がかかります。
デジタルであれば、検索で一発で調べられる上に必要な条件に合わせてソートすることが出来ます。
保管するスペースが必要になる
紙の日報を保管しておくための本棚、ファイルなど地味ですがかなりスペースを取ります。
毎日発生する日報を、過去3年分、5年分、業界によっては10年保管などもありますのでその分を紙で保管しようとすると、結構なスペースが必要となります。
また先ほどの検索の話にもなりますが、それだけスペースが広くなってくるとなおさら探すのに一苦労です。
たくさんあるファイルから背表紙のタイトルを探して、そのファイルをめくって・・・
欲しい情報1つアクセスするだけでも大変になります。
紙の製造日報はコストが高い
いやいやデジタルの方が高いでしょ、と思うかもしれませんが下手すれば紙の方が平気で高くつきます。
紙の日報で運用するのは、紙代以上に別のコストが発生するからです。
紙の製造日報にかかるコストは
- 印刷紙・印刷代
- 場所代(棚の面積分)
- 整理棚の費用、整理用のファイルのコスト
- 紙の日報を現場に配布、回収するコスト(その時間だけ人件費が発生する)
- 回収した紙をExcelに転記するコスト
- 入力後の紙を整理しながらファイルに入れるコスト
これらに加えて前記したように、過去の履歴を追いたいとなったときにはファイルを漁って必要な日報を探して、また棚に戻すという時間も発生します。
紙の運用でかかるコストは、人件費と場所代が大きいと言えます。
紙の製造日報をデータ活用するために
とはいえ、粉塵が多かったり工場内の電波環境が悪かったりなど工場の事情でデジタル化が難しいというのもあります。
また職人がみなタブレットを扱えるかというと、それも難しい話です。
SaaSの多くはタブレットで入力してペーパーレス化しよう、CSVデータを取り込んで在庫管理しようというもので
紙のほうが運用しやすい工場にとってはハードルが高いのが実態です。
なので、紙をそのままデータに変える日報解析アプリを作ることにしました。
ちなみに、ノーコードツールで作る日報解析アプリについて、検証記録を本ブログで公開しています。

日報解析アプリ MONO-TRACEとは
紙の製造日報の運用はそのままで、日報の情報をデータ化するアプリとして開発中です。
このブログタイトルになっているMONO=モノ・物 製造業のものづくりと、TRACE=映す、トレーサビリティをかけてます。
今まで製造日報を単なるメモとして、記録としてしか活用出来ていなかった工場に使ってもらいたいという想いで開発中です。
MONO-TRACEの特徴
完成したらLPを作って機能をきちんと紹介しようと思いますが、MONO-TRACEには以下の機能を盛り込もうと検討しています。
- 紙の日報のPDF、もしくはアプリから写真撮影してアップロード
- アップロードされた日報を読みこんで、情報をCSVに変換+データベース保存
- 既存のExcelやCSVのマスターがあれば、それを読みこむことも可能
- マスターリストが無い、もしくは不十分でも日報を読み取ったら自動でマスターに追加していく仕組み
- 読みこんだ日報のデータを元に、工場の出来高や損失をダッシュボードで表示
- 一週間分の日報解析データから、週報をレポート形式で自動生成しメール、slackで配信する仕組み
- 読みこんだ日報から、必要なデータだけすぐ取り出せる(探す手間をゼロに)
- 自社の製造データを元に質問に答えるAIチャット機能付き
適材適所でAIを活用し、適切なプロンプトを与えることで製造業に特化した日報解析アプリにすることを目指しています。
それでいて、出来るだけシンプルなUI(画面レイアウト)にまとめて、直観的に操作できるように工夫しています。
日々増えていく生産品目にも対応できるように、製品マスタも一緒に育てていくAI事務員という位置づけで開発中です。
MONO-TRACEが向いている企業
以下に当てはまる方、工場に向けて制作しています。
- 紙の日報のまま運用していて、デジタル化したくても変えにくい事情がある工場
- トラブル時、監査のときに過去の履歴を調べてまとめるのが一大イベントになっている工場
- 今の工場はなんとなく回っているけれど、実際どれだけの儲けと損失が出ているのかが見えない工場
- SaaSを入れたいがマスタ整理が出来てなく、諦めている企業
- 今までの日報データを有効活用したい企業
こういった工場、企業の方へ向けて制作しておりますので完成した際にはぜひ、活用してください。
MONO-TRACEが向いていない企業
万能ではないため、以下に当てはまる企業は向いていないかもしれません。
- すでに日報をデジタルで入力している企業
➔いずれMONO-TRACEもデジタル入力に対応する計画ですが、今のままでいいかもしれません。 - 在庫管理や生産管理のシステムを検討している企業
➔こちらも要望あれば追加検討しますが、開発工数が増えるため既存のSaaSを使うほうが手っ取り早いです。 - 日報がそもそもそんなに必要としていない企業
➔日報解析をメインにしているので、勿体ないです。 - すでに在庫管理や生産管理、ERPなどの大規模なシステムを導入している企業
➔現状運用できてるなら、事情が無い限り日報解析はいらないかもしれません。
日報解析アプリ MONO-TRACEの開発状況
執筆時点ではUIの作りこみと、メインになる解析の精度を向上させるAIプロンプトの調整、解析ミスをそのままにせずにユーザーへ確認依頼を回すことで誤読を学習する仕組みを構築しています。
UIについてはGoogle Stichiというツールで仮に作って、イメージを固めました。
Google Stitchiについては以前書いた「Google Stitchiの使い方と活用法」という記事で詳しく紹介しています。
簡単に言うと、自然言語で指示するとAIがデザイン、レイアウトを出力してくれるツールで、現在(26年4月)は無料で使用できます。
日報解析アプリ MONO-TRACE開発画面
今の開発中のアプリがどんな感じか、開発中の画面を公開します。
※開発中のため、本番では変更になることもあります。ご了承ください。
ホーム画面(ダッシュボード)

解析した日報のデータを元に、工場の生産高と、損失金額を可視化するダッシュボードです。
不良原因の構成比、不良率も見える化します。
任意の期間、任意の品番で表示することも可能です。
日報アップロード画面

ドラッグ&ドロップやファイル選択でPDF、JPG、PNG形式でアップロードできます。
スマホ版ではカメラ起動して写真撮ってそのままアップロードできるようにします。
以前ノーコードツールのDifyで解析フローを組んだときは、Dify側の制限で一括9枚までしかアップロードできませんでしたが、今回は80枚近く一気にアップロードできました。
日報一覧

読みこんだ日報は、一覧としてここに表示されます。間違ってアップロードしてしまったときとかは、この画面から無効化すれば、解析結果も無効化出来るので誤操作による修正を可能にしています。
週間レポート画面

毎週月曜日の朝に先週分の週間レポートを自動配信し、今週分のメンテナンス計画を立てたり、生産時にとくに注意する品番は何かを見極めるのに活用できます。
過去の履歴なども比較しながら、特定の品番で以前より不良が増えているなどの傾向も表示されます。
週間レポートは、アプリ上でも確認できるほか、毎週決まった曜日、時間にメールやSlackでアカウント登録先に配信する予定です。
また、前週との比較もしているため週単位で稼働が増えているか減っているか、不良がどう推移しているかなどの指標に出来ます。
日報を「何かあったときの記録」から「今改善するためのデータ」にするための機能です。
CSV管理画面


解析した日報データは、全ての生産履歴、時間を元にCSV形式で蓄積されていきます。
特定の期間や品番でソートすることも出来るため
- 一か月分の生産実績データが必要
- 特定の品番だけの生産履歴をまとめたい
といったときに、必要な情報だけをダウンロードすることが可能です。
マスタ管理画面

既にあるExcel、CSVを一括でアップロードしてマスタ登録することも出来ますし、マスタにない品番でも日報をアップロードするだけでマスタに追加することが可能です。
- 管理画面から簡単に修正も可能
- 修正した内容で過去の情報を一括修正することも可能
- 蓄積したマスタはダウンロードして、他SaaSへの活用
日々新規品番が増えたりする中で地味に面倒なのがマスタ整備ですが、毎日運用している製造日報を読み取るだけでマスタが整備されていく仕組みにしています。
AIチャット画面

読みこんだ日報データの情報から、質問に対して回答してくれるAIチャットを搭載しています。
読みこんだ日報データから回答していくため、データが蓄積されるほど過去との比較が出来るようになっていく設定です。
日報解析アプリ MONO-TRACEで難しいところ
以前、Difyを使った日報読み取りでフォント別の精度を検証していたこともあって、AIが読み取り苦戦するフォントも分かっていたのでそのフォントでOCR精度をチェックしています。
デジタル入力であれば、最初の読み取りに苦戦することもないのでしょうがそれだと本当に現場が楽になるのかという疑問があったので、ここはアプリの心臓部としてこだわっています。
このアプリでは、慣れた現場の仕組みを変えることなく、その後の集計や解読、運用という業務をAIで補助する目的としています。
①解析精度100%は正直ムリ
AIのプロンプトを調整したり、AIのモデルを有料版の賢い子に変えてテストしていますが読み違いはまれに発生します。
今検証しているフォントが人の字より読みにくいくらいの筆記体なので、小文字のn(エヌ)をп(キリル文字?)というので読み取ったり、cとoを間違えたりなどのパターンが出ています。
現状では90枚読み取って2件の読み間違いが発生しています。
②どんなフォームでも読み取ることが出来るのか
入力インターフェースを固定(ここに品番、ここに日付)などが出来ればOCR解析の精度も上げれると思いますが、それをしてしまうと現場のやり方を変えることになってしまうので
基本的にはどんなフォームであっても読み取れるように調整しています。
現状では日付と時間帯を紐づけて解読することまで出来ているので問題ないと思いますが
フォームによって読み取り精度に差が出る可能性はあります。
解析精度を上げるために
登録済みマスタとの類似チェック
マスタ登録されている品番(正規のもの)とAIが読んだ品番が少し違っている場合、ユーザーに確認依頼をするプロセスを構築しています。
例.AIが読み取った「A-003」はマスタ登録されている「A003」と同じですか?(ハイフン有無)
AIの解読した内容をチェックして、修正出来るようにしているためAIの誤読で勝手に間違ったデータを蓄積するのを防止します。
修正内容を学習して次回から自動修正する
ユーザーに確認してもらった後は、次回からA-003と読み取った場合は自動でマスタのA003に修正するように出来ます。
運用開始直後はAIが色々確認してくることもあると思いますが、新人が聞いてくるものと思って回答してあげてください。
次から学習して、「あ、A-003って書いてあるけどA003のことだな」って処理するようになります。
最後に
少子高齢化が進み、AIの実用化が目まぐるしい2026年以降において、いかにAIを活用して業務を効率化出来るかが企業存続の鍵を握ると確信しています。
AIに出来ることはAIに任せて、人にしかできないことを人がやる。
MONO-TRACEは現在テストユーザーを募集しています。
- 初月無料(ベーシックプラン。それ以上のプランは登録時に相談受け付けます)
- フィードバックいただける企業様優遇
日報解析アプリMONO-TRACEにご興味ある方はお問合せフォームからご連絡ください。
ぜひとも、応援よろしくお願いします!

