
毎日たまる日報。
集計するだけでも大変だなぁ・・・



その集計、私(AI)出来ますよ



お、本当か?
じゃあ、任せてみるよ!
製造現場の朝は、前日の「紙」との戦いから始まります。
現場でトラブルが起き、機械が止まり、不良が出る。
現場の作業者は、油で汚れた手のまま必死にその事実を「日報」に書き込みます。
その紙は、事務所のデスクに山積みされます。
山積みの生産日報、不良報告、設備トラブルのメモ。
それを一枚ずつめくりながら、Excelに数字を打ち込む。
この作業に、あなたの工場では毎日どれくらい時間を使っていますか?
しかし、本当に深刻なのは「入力の手間」ではありません。
問題は、集計しても何も見えないことです。
「なんとなく最近不良が多いな」とは分かっても、
- その不良で今月いくら損しているのか(ロス金額)
- 真の原因はどこにあるのか
が見えてきません。
だから私は、人間が時間をかけずとも集計出来る仕組みを考えました。
私が描いたズボラDX:人間は「置くだけ」、AIが「作るだけ」
この集計する時間を解消するために、私が掲げたコンセプトは極めてシンプルです。
「現場の負担をゼロにする」
これに尽きます。
新しいITツールを導入して、現場に「これからはタブレットで入力してくれ」とお願いしても、たいていは失敗します。
軍手をしたままでは入力しにくいし、そもそも入力項目が増えること自体が現場の反発を招くからです。
だから、運用のイメージはこうです。
- 現場: 今まで通り、紙の日報を書く。それをスキャンして(あるいはExcelならそのまま)、特定のGoogleドライブフォルダに「ポイッ」と放り込む。それだけ。
- AI: フォルダに入ったファイルを勝手に読み取り、集計し、分析する。
- 管理者: 毎週月曜日の朝、出社してPCを開くと、先週の「工場の通信簿(レポート)」が自動で届いている。
人間は「ファイルを置くだけ」
あとはAIが勝手に「レポートを作るだけ」
そんな「ズボラDX」を、私は形にしようと考えました。
ズボラDX開発目標:3つの強力なダッシュボード
ただ集計するだけでは意味がありません。
経営者や工場長が、パッと見て「明日から何をすべきか」を判断できる武器として、
以下の3つのダッシュボードをゴールに設定しました。
金額ダッシュボード(「稼ぎ」と「損失」の可視化)


工場生産実績の金額の見える化ダッシュボードのダミー。AI解説付き
「不良率が2.9%」と言われてもピンときませんが、「不良で今週13万円捨てました」と言われれば、顔色が変わります。
良品が生んだ売り上げと、不良による損失を「円」で可視化します。
不良原因分析(ワーストランキング)


不良分析ダッシュボードのダミー。AIに何の不良が多いか、どの機械で不良が多いかを分析させたい
どの品番で、どんな不良(キズ、寸法、汚れなど)が頻発しているのか。
AIに日報の自由記述欄を読み取らせ、ワースト順にランキング化するイメージです。
AIに不良原因と対策の知識を埋め込んだら、不良内容を元に原因を調査するレポートまでやりたい。
稼働率ダッシュボード(ロス時間の見える化)
「機械が止まっていた時間」を積み上げグラフにし、それが
- 「段取り替え」
- 「故障」
- 「材料待ち」
何が原因で停止しているのかを瞬時に判別できるダッシュボード。
(稼働率ダッシュボードのダミーはまだ作成していません!)
日報を人が読み解いて集計するのは大変
やることは日報を転記してまとめるだけ。
でも、作業にはめちゃくちゃ時間がかかるし、日々積み重なる日報の山で
転記するだけで手いっぱいになり、実際の分析や対策に時間を作れない工場も多いはず。
このレポート作成を
- Make(ツール同士を自動連携させるサービス)
- Dify(AIアプリを作る基盤)
を組み合わせて作ろうと考えました。
安価に、かつ自作で作ってしまおうというのが今回のプロジェクトの始まりでした。
ズボラDXの心臓部:Make × Dify
この「ズボラDX」を実現するために、私が選んだのはMakeとDifyという2つの強力なツールです。
Make(司令塔)
「時間」と「ファイル」の管理担当です。
月曜日の朝8時になったらGoogleドライブの指定フォルダを見に行き
一週間分の日報を掴んでDifyへ放り込む、といった「自動化の配線」を担います。
Dify(脳)
「現場の日報」を読み解く担当です。
Google AIの「Gemini」などを脳として使い、バラバラな形式の日報から
- 「良品数」
- 「不良原因」
- 「停止時間」
といった必要なデータだけを正確に抜き出し、レポートをまとめる役割です。
この2つを連携させることで、毎週・毎月の定期配信までを完全に自動化し、
報告資料を作るための時間をゼロにする。
そんな設計構想を考えました。
テストデータの作成:ズボラDX用AIへの「挑戦状」
仕組みを構築したら、次は現場レベルの検証です。
まずはMake(全自動)は組まずに手動でDifyが読み取ってくれるかをテストすることにしました。
私は、AIに少しだけ「意地悪な日報」を用意しました。
今回用意したのは次の3種類。
- ダミーの品番リスト:数十種類の製品コード、単価リスト。
- 1週間分の日報データ:Excelだけではなく、スキャンしたPDFの日報。
- データの「ゆらぎ」:日付はあえて統一していません。
- 「2026年」
- 「R8」
- 「令和8年」
現場では日付の書き方は人によって違うのはよくあることです。
むしろ、こういうデータを処理できないならAIのDXなんて現場では使い物になりません。
「これくらい、さすがにAIなら余裕でしょ」
Difyに日報ファイルを投げます。
日報をAIが読み取り、データを整理し、アウトプットされる。
そんな未来を想像しながら、処理が終わるのを待ちました。
ズボラDXの検証結果
AIは「日報がある」ことしか分からなかった
テストを開始して、すぐに奇妙なことに気付きました。
AIは確かに、フォルダの中のファイルを認識しています。
「日報_1日目.pdf」
「日報_2日目.xlsx」
ファイルがあることはAIもきちんと理解している。
しかし、中身を理解していない。
- 生産数
- 不良数
- 稼働停止時間
といった日報の中身が一切出てこないのです。
つまりAIは、
「ファイルは見ているが、中身を読んでいない」
そんな状態でした。
Pythonで突破を試みる
「それならテキストを取り出してAIに渡せばいい」
そう考えた私は、Pythonを使って、PDFやExcelから文字データを抽出する方法を試しました。
やろうとしていたのはこんな流れです。


- ユーザー入力:日報データ(Excel、PDFを入れる)
- 分岐①知識習得:ナレッジの製品リストから必要な情報を抜き取る
- 分岐②Python:日報データを読み取り文字データの抽出(コード実行)
- LLM(AI);:ナレッジの製品リストと日報データを元に集計+計算
これができれば、AIは日報の中身を理解できるはずです。
しかしここでも問題が起きました。


今回使っているDify環境では、データ処理でよく使う「pandas」が使えませんでした。
結果はもちろん、エラー。ここで一度、完全に詰みました。
PDF日報データの読み取りに成功!
Pythonを削除して、なんとか動作だけは通しました。
LLMのAIモデルを変更(Vision対応モデル)にしてPDF日報の読み取りにも成功。



まず、提供された手書き日報のスキャン画像から、指示された項目(日付、生産設備、品番、品名、作業者、時間帯、良品数、不良数、不良内容)を読み取り、整理いたしました。\n\n### 1. 日報データ抽出結果\n\n**日報1:**\n* **日付:** 2026年 2月 19日\n* **生産設備:** 2号機\n* **品番:** gt22ixr8\n* **品名:** ケース\n* **作業記録:**\n * 9:00~10:00: 作業者: 山田, 良品数: 42, 不良数: 0, 不良内容: -\n * 10:00~11:00: 作業者: 山田, 良品数: 42, 不良数: 0, 不良内容: -\n * 11:00~12:00: 作業者: 山田, 良品数: 42, 不良数: 0, 不良内容: -\n *
・・・以下略。



お!PDFちゃんと読み込めてるじゃん!



しかしながら、「ナレッジの【単価リスト】」が今回のコンテキストでは提供されていないため、良品数 × 単価の計算および生産金額の算出は現時点では実行できません。
CSV出力では「生産金額」の列を設け、単価リストが提供され次第計算可能であることを示唆する形で空欄とさせていただきます。



あれ・・・?
日報データを解析することには成功したが、肝心の製品リストがAIに届いていない?
AIからすると



日報データは見つけたから、データ抽出完了したよ!
金額の集計しようにも製品リストはもらっていないよ?
単価が分からないから、生産金額って項目を作って空欄にしておくね!
という状態。
AIが「それっぽいデータ」を作り始めた
AIモデルを変えたり、ナレッジの検索設定を色々いじってみましたが
結局、ナレッジの製品リストの単価が読み込めないため、適当な単価で金額を出力するようになりました。



ご提示いただいたコンテキストには「単価リスト」が含まれておりませんでしたので、今回は以下の仮定単価を設定して集計・計算を行いました。
【仮定単価リスト】
品番 gt22ixr8(ケース):100円
品番 fg5ac3b3(プーリ):200円
品番 hjrhzre5(カバー):150円



おやおや?



それぞれの品番に基づき、各行の良品数を単価に乗算します。
2026/02/19(単価100円)
9-10時: 42個 × 100 = 4,200円
10-11時: 42個 × 100 = 4,200円
11-12時: 42個 × 100 = 4,200円
13-14時: 38個 × 100 = 3,800円
・・以下略



・・・
AIが「それっぽい数字」を作り出してきた。
つまりこの時点で完成したシステムは、
分析システムではなく「それっぽい嘘をつくレポート生成機」でした。
ズボラDXの検証結果で分かったこと
AIはめちゃくちゃ手を動かすのが早い、優秀な新人だということ。
今回の検証を通じて、DifyとAIの「限界」と「可能性」がはっきりと見えました。
「見る」と「読む」は別物
Visionモデルを使えば、手書き文字をデジタル化するのは実現しました。
しかし、それは「文字を書き起こした」だけで
「単価マスタ」と紐付けるのは、また別の指示(ワークフロー)を工夫する必要があるということ。
AIは「空気を読んで嘘をつく」
データが足りないと、AIは親切心(?)から勝手に単価を捏造して計算を完結させようとします。
これを「ハルシネーション」と呼びますが、製造現場の数字でこれをやられると命取り。
まさに「怒られたくないから頑張って形にしようとする新人」状態。
「ナレッジ」の壁
単にファイルをアップロードしただけでは、AIはそれを「辞書」として使いこなせないということ。
「この品番のときは、この辞書を引け」という明確な導線(検索クエリの最適化)に工夫が必要でした。
それでも、このプロジェクトを続けたい理由
正直、Difyのみのテスト運用でつまづいているので、一筋縄ではいかないだろうと想像しています。
しかし、今回「日報PDFの解読」には成功したということと、少し対策が見えてきました。
知識習得前にAIに読ませる
開始ノードと知識習得の間に、日報ファイルをAIに読み込ませてテキストとして抽出することで
知識習得の時に「日報の品番と製品リストの品番」をリンクさせてピンポイントで抽出できないかという案。
ただし、品番が多くなると、似た品番を抽出したりするミスが増える懸念も考えられる。
「反復(Iteration)」という手段
「品番ごとに1件ずつ辞書を引かせる」という手法を使えば、ハルシネーションを防ぎ
100品番と増えたとしても辞書(ナレッジ)から抽出、集計ができると想定しています。
処理速度の低下、トークン消費量はどうなるか・・・。
現場の「紙」を捨てなくていい
何よりこだわっているのは、今の現場のスタイルを変えなくていいということ。
タブレット導入に数年かけるより、今の紙の日報をAIに最適化させる方が現場の負担は圧倒的に少ないはず。
「人間がツールに合わせるのではなく、人間のやり方にツールが合わせられるようにしたい。」
これが、ズボラDXに込めた想いです。
まとめ:ズボラDXは「大人の自由研究」か「修羅の道」か
Difyのようなノーコードツールを使えば、誰でもDXに挑戦できます。
しかし、今回のように「実戦」で使えるレベルにするには、相応の試行錯誤と技術的理解が必要です。
自作するスキルや使い方がわからないという方は
既存のSaaSなど「型」が決まっているツールを使う方が圧倒的に早いです。


それでも自作するのは、自社の業務や理想とする武器が手に入るからです。
もし自社に合わせて「こんなツールが欲しい」というイメージがあるのでしたら
PythonやAIスキルを効率的に学習できる、スクールの活用がオススメです。


正直、自作DXは大変です。
でも、エラーを吐きながらでも人間がやり方を変えない「ズボラDX」が本当の在り方だと思っています。
次回、第2話は今回失敗した「自動レポート作成ツール」の設計構想を解説します。
▼第2話はこちらからどうぞ!










